公開: 2023年4月22日
更新: 2023年10月18日
パリ大学のトマス・アキュナスは、神の存在証明として、全ての人間が神を理解できるのは、少なくとも「神」の概念が存在しているからだとして、概念としての「神」の「ゆるぎない」存在を主張しました。これを現在、我々は、「実在論」と呼んでいます。
このアキュナスの実在論に対して、オクスフォード大学のオッカムは、「神」は、人間が勝手に作り上げた概念につけた単なる名前に過ぎない、と主張しました。オッカムは、概念が存在することと、神の実体が存在することには、直接の関係はないと、したのでした。
このオッカムの主張は、16世紀頃にイギリスで確立された経験論哲学の基礎になった思想であると言えるでしょう。それに対して、アキュナスの主張は、古代ギリシャの哲学者であるプラトンが主張したイデア論に似ていて、神のイデアの存在を論じたものであると言えます。
経験論哲学については、19世紀のドイツの哲学者、カントが経験からは、物事の真実を理解することはできないとする、観念論哲学の立場から、批判を展開しました。カントの立場も、プラトンのイデア論に近い立場でした。